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ごぼうのはなし

ごぼうは猫に与えてもいい食材?|上手な与え方や与える際の注意点を解説

ごぼうは猫に与えてもいい食材?|上手な与え方や与える際の注意点を解説

愛猫には、いつまでも健康でいてほしいと願うものです。「できるだけ健康に良い栄養素を摂取させたい」と、健康食材としても知られるごぼうを、猫に与えようか迷っている人もいるのではないでしょうか。

本記事では、ごぼうは猫に与えて良いか、またごぼうにはどのような栄養素が含まれているのか、詳しく解説します。また、実際に猫にごぼうを与える方法も、併せて紹介しました。
愛猫の健康維持に役立つヒントとして、活用してください。

ごぼうと猫の基本知識

ごぼうを猫に与えても問題がないか確認する前に、ごぼうと猫、それぞれの基本知識を押さえておきましょう。ごぼうと猫の特性を解説します。

ごぼうはどのような野菜か

ごぼうはキク科の多年草で、ユーラシア大陸が原産です。日本に伝来した正確な年代は不明ですが、縄文時代にはあったとする説や、平安時代にはあったという説などが見られます。

ごぼうを食べる文化は世界的に見ても珍しく、日本や台湾、韓国などの東アジア地域のみで見られる食習慣です。近年は、ヨーロッパでも注目を集めているといわれます。

ごぼうの旬は、秋から冬にかけて、そして春にもあります。私たちがよく食べるのは、細長い形の「滝野川ごぼう」です。春が旬の「春ごぼう」や、茎付きで流通する「葉ごぼう」など、さまざまな種類があります。

猫はどのような動物か

家庭のペットとして愛される猫は、ネコ科に属するイエネコと呼ばれる種類です。

猫は肉食動物です。ライオンやトラなどのネコ科の動物は、自然界で捕らえた獲物のみを食べて生きています。その仲間であるイエネコも、基本的に野菜は不要です。猫は草食動物や雑食動物のように、食べ物をすりつぶすための歯も持っていません。

市販のキャットフードには、猫が必要な栄養素が十分に含まれており、キャットフードだけで健康を維持できます。ただし、猫は消化不良や便秘を解消したり、飲み込んだ毛玉を吐き出すために、草を食べることがあります。

ごぼうは、猫に与えても安全?

ごぼうには、猫に害になる成分は含まれておらず、与えても問題ありません。むしろ健康効果が期待できる食材です。

ただし、前章で解説したように、猫は肉食動物であり、消化器官も肉食向きにできています。「健康に良い」といっても、大量のごぼうを一度に与えると、消化しきれず体調を崩すおそれがあります。
ごぼうは少しずつ、様子を見ながら、猫に与えるようにしてください。

ごぼうに含まれる主要な栄養素

ごぼうは栄養豊富な食材です。ごぼうに含まれる多様な栄養素から、主だった栄養素5種類の特徴や効能を解説します。

食物繊維

ごぼうには、豊富な食物繊維が含まれます。ごぼうの食物繊維は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類に分かれます。

不溶性食物繊維とは、水に溶けない食物繊維です。腸内の水分を吸収し、便のかさを増す働きをします。腸の内容物を肛門に送る「ぜん動運動」も高めます。

水溶性食物繊維は、水に溶ける食物繊維です。腸で水に溶け、ゲル状になって有害な成分を吸着、便とともに体外に排出します。

カリウム

ごぼうは、カリウムも豊富です。カリウムは、体内の塩分(ナトリウム)の排出に深く関与し、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制し、尿とともに排出させる働きを持っています。これは、血圧低下にも寄与します。また、カリウムは心機能や筋肉機能、神経伝達の調整するうえでも欠かせない栄養素です。

マグネシウム

マグネシウムは、代謝や心臓の健康に役立つ栄養素です。マグネシウムの欠乏は、血管系の病気(不整脈など)を引き起こすおそれがあります。また、マグネシウムは骨の形成や、筋肉の収縮、神経の伝達に欠かせないミネラルの1つです。

ただし、過剰なマグネシウムの摂取は、尿石症の要因となることがあります。

カルシウム

カルシウムもごぼうに豊富に含まれています。カルシウムは、骨や歯の形成に関与します。また、筋肉の収縮・弛緩にも関わる大切な栄養素です。
カルシウムは通常、骨のなかに蓄積されています。体内でカルシウムが不足すると、体は骨に蓄えたカルシウムを使います。カルシウム不足が骨をもろくするといわれるのは、このためです。

ただし、カルシウムを摂取しすぎると、尿石症を引き起こすおそれがあります。適量を継続的に摂取するようにしましょう。

リン

リンは、骨や歯の健康維持、健康な細胞膜の構成に欠かせない栄養素です。カルシウムと結合しやすく、体内のさまざまな場所で良い働きも、悪い働きもするため、バランスよく摂取することが大切です。

リンは、猫に多い慢性腎臓病にもかかわる栄養素です。健康な猫なら心配ありませんが、腎臓病にかかっている猫にごぼうを与える際は、動物病院に相談したほうがよいでしょう。

ごぼうを猫に与えるメリット

栄養豊富なごぼうを、猫に与えると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。猫の健康に関連する、3つのメリットを解説します。

腸内環境の改善に役立つ

ごぼうに豊富に含まれる食物繊維は、腸内環境の改善と健康維持に役立ちます。ごぼうには、便を固めてかさを増すように働く不溶性食物繊維と、有害物質を吸着し排出する働きを持つ水溶性食物繊維の両方が含まれており、便が適度なやわらかさになります。食物繊維は、キャットフードにも含まれているほど、大切な栄養素です。

血糖を安定させる

ごぼうには、多糖類の一種である「イヌリン」が含まれています。イヌリンは糖の吸収を抑制し、血糖上昇を防ぐ働きをします。

肉食動物である猫は、本来、糖を多量に摂取する生活は送っていません。血糖を下げる体内の機能も十分に発達していないため、代謝が不得意です。ただし、人と暮らすイエネコは、おやつなど糖質の高い食べ物を口にする機会があります。このような食事は、猫の体に負担をかけて血糖を下げようとし、糖尿病となる可能性があります。

血糖を安定させるイヌリンは、猫にとって歓迎すべき栄養素です。

ダイエットに役立つ

ごぼうは、大部分が食物繊維と水分でできています。低カロリーな食材である一方、少しの量を食べただけでお腹のなかでかさが増え、満腹感が得られ、加えて満腹感が持続するという特徴があります。猫の食事に少量のごぼうを加えることで、空腹によるストレスを感じさせない、栄養豊富なダイエット食になります。

猫にごぼうを与える際に気をつけること

猫にごぼうを与える際、気をつけたい4つのポイントを解説します。安心してごぼうを与えるために、それぞれの注意点を確認しておきましょう。

少量ずつ様子を見ながら与える

もともとが肉食動物の猫の体は、食物繊維が豊富な野菜類の消化吸収には適していません。そのため、一度に大量に与えると、消化不良や体調不良を起こすおそれがあります。
おやつや、キャットフードのトッピングとして与える程度が、適量です。

加熱してから与える

生野菜は、猫の消化によくありません。ごぼうを与える際は、加熱し、十分に冷まします。
ごぼうに火を通し過ぎると、栄養素が失われる可能性があります。ごぼうの栄養を残したまま与えたいときは、サッと加熱する程度にとどめてください。

食べやすいサイズにカットしてから与える

猫の小さな口に入るよう、食べやすいサイズにカットしてから、ごぼうを与えます。茹でたごぼうをミキサーにかけ、ピューレ状にして与えるやり方もおすすめです。人間はごぼうのシャキシャキした食感を楽しむことができますが、猫にとってごぼうの食感は重要ではないことを踏まえ、食べやすい大きさにしてから与えてください。

アレルギーに気をつける

猫が食べ慣れない野菜を与える際は、アレルギーへの注意が必要です。

猫が初めてごぼうを食べる際は、ごぼうを単独で与えます。他の野菜と混ぜると、アレルギー反応が出たときに、アレルギーの原因物質(アレルゲン)を特定できなくなってしまうためです。

長期的に継続して与える事や、過剰摂取に気をつける

カルシウムやマグネシウム、リンは摂取しすぎると、尿石症や慢性腎臓病を引き起こすおそれがあります。過剰摂取にならないように、適度な摂取を心がけます。
また長期的に継続して与える場合も、注意が必要です。

猫に与えてはいけない食べ物

ごぼうは猫に与えて問題のない食べ物ですが、猫に絶対に与えてはいけない食べ物があります。以下の食べ物のなかには、中毒や命の危険を引き起こすものもあります。
間違って与えないよう、細心の注意を払いましょう。

  • 玉ネギ、ニンニク
  • 生卵
  • 生肉、骨
  • チョコレート、カフェイン、アルコール
  • 牛乳、乳製品
  • ブドウ、レーズン
  • 甲殻類(生のエビ・カニなど)
  • 生のイカ・タコ、貝類 など

猫にごぼうを与えるアイデア3選

健康に良い栄養素を豊富に含むごぼうを、猫に与えるアイデアを、3つ紹介します。

乾燥ごぼうをトッピングする

ごぼうを少しだけ与えたいときは、乾燥ごぼうがおすすめです。入手しやすく、手軽に使えます。乾燥ごぼうを猫が食べやすい大きさに細かく切り、トッピングにしてもよいでしょう。

加熱し小さく刻んで、フードに混ぜる

生のごぼうを用意し、加熱して細かく刻み、毎日のキャットフードに混ぜて与えるやり方もおすすめです。フードに混ぜることで、いつものごはんが「手作りごはん」感覚になります。

まとめ

ごぼうは、食物繊維やカルシウム、マグネシウムなど、健康に良い栄養素を豊富に含む食材です。猫に与えても問題なく、腸内環境や便通を改善する効果が期待できます。


  • 皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院 多摩川 小林 真也(獣医師)


    監修者
    皮膚と耳専門 ヒフカフェ動物病院 多摩川 小林 真也(獣医師)

    2005年北里大学を卒業後4年の臨床経験を経て、北里大学附属動物病院の研修医として勤務。その後は東京農工大学皮膚科研修医として皮膚科と耳科を学び、その経験を生かして2016年に大田区田園調布にhiff cafe tamagawaを設立。

    2019年に板橋区の北川犬猫病院もグループ化し、複数施設で診療を行なっている。

    ヒフカフェ動物病院 多摩川 HP